成長期とスポーツの問題点

kodomo

 成長期に行うスポーツは、個々の青少年にとって非常に有意義なものと考えられてきました。その効用や効果は以下のようなものと考えられています。

1.成長発達の促進
2.体力の向上
3.精神的発達の促進
4.疲労回復力の向上
5.生活習慣病(成人病)のリスクの減少
6.危険からの回避能力の向上
7.ストレスの解消
8.生涯スポーツの基礎となる

 しかし、最近では、1970年頃までは見られた、乳幼児期の子供が自宅近くの空き地や広場で、木登りや鬼ごっこ・野球などをして集団で遊んだり、家事の手伝いをすると言った光景はほっとんどみられなくなっています。したがって、学童期の子供達のスポーツや運動の基本となる、乳幼児期の自然発生的、包括的遊びが消失することにより、学童期のスポーツは、社会性だけを意図的に抽出した大人の指導や管理のもとに行われる「教育」(学校体育・社会体育)と言う名の形式主義・管理主義・技術主義・勝利主義・に偏重した”ゆとりや、無駄な遊び”のないものとなっている傾向があると思われます。
 その結果として、現代の学童及び青少年は二律背反した2つの問題に曝されています。すなわち、その1つは以上のような状況に反発することから来る、運動不足による「肥満児」の増加である。今1つの問題点は、形式主義・管理主義・技術主義・勝利主義に犯されたスポーツ活動の中で翻弄され、優秀な能力を持ったスポーツ少年達のほとんどが「スポーツ障害」の危険に曝されていると言うことです。以下この2点について若干触れてみます。

《運動不足=肥満児の現況》 basketball

 最近の子供達の運動不足の原因は、東京女子医大(小児科)の浅井利夫先生によると、

1.テレビを見る時間が長い
2.勉強や塾に忙しい
3.遊ぶ場所がない
4.歩く機会が少ない
5.親が過保護である
6.仲間が少ない
7.遊ぶ方法を知らない
8.車が多く、危険である

などが上げられる。また、日本小児科学会によると肥満の程度とテレビ視聴やテレビゲームを行う時間との間には相関があると言われている。実際に、文部省や東京都によると肥満児は年々増加傾向にあると言われている。以下にその資料を示します。

《学童・青少年のスポーツ障害》 sports

 しばしば、”子供の頃からスポーツをやりすぎると成長障害に繋がるのではないか”という声を聴くことがあります。これは誤りで、正しいスポーツのやり方をしさえすれば、上にも書きましたように成長や精神発達の手助けになったとしても阻害することはありません。しかし、運動不足とは逆に、運動やスポーツをやりすぎたり間違ったやり方をすると、スポーツ障害が起こってきます。そして、そのスポーツ障害は、子供達の身体的・精神的発育を阻害します。スポーツ障害と言うと外傷がすぐ想像されますが、実際には内科的なものと整形外科的なものの2種の障害があります。










<整形外科的スポーツ障害(スポーツ外傷)>
 左図を見てわかるように障害の部位は各スポーツ種目により異なります。しかし、青少年のスポーツ外傷に共通してみられるのは成長点のある関節障害が主体を占めていることが見て取れます。しかも全体的に頻度の高い足関節や膝関節では中学生や高校生の4人に1人の割合で認められることが判ります。

<内科的スポーツ障害>
スポーツ障害というとスポーツ外傷がまず頭に浮かぶが、実際は内科的障害も意外と多く認められます。まず現場でしばしば認められるものは、急性障害で、突然死・熱中症・低血糖症候群・高山病・潜水病・過呼吸症候群・喘息・アナフィラキシーなどです。そして、知らず知らずのうちに体を蝕んでしまうのが慢性障害で、貧血・不整脈・スポーツ心臓・蛋白尿・血尿・オーバートレーニング・女性では生理不順などがあります。

《学童・青少年の正しいスポーツ指導》
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 まず年齢により目標が異なり、その年齢にあった有効な運動や運動方法を採る必要があると言うことです。しかも、1種目のスポーツだけでなく数種目のスポーツをさせる必要があります。したがって、スポーツ外傷を防止するためには、目先の成績や成果にとらわれ無理な指導や強要をしないように心がける必要があります。さらに、不幸にも障害が発生した場合には早期に治療し、完治するまではスポーツに復帰させないように指導する必要があります。とりわけ、小学生の場合は技術的なことは二の次にして、その競技の楽しさと基本動作作りを中心として指導すべきだと思います。そして、中学生で基礎体力作り、高校生で初めて、筋力トレーニングや技術的な練習を取り入れて行くのがよいと思います。また、危険防止のための独自のルールを作ったり、スポーツ防具を装着したりするよう指導することもスポーツ障害を防止する上で重要だと思います。以下に宮下充正先生の、「発育・発達パターンと年齢別運動強化方針」を掲載します。