「Mr.胃ぶくろ」の仲間たち



様々な困難を乗り越えて、孤軍奮闘24時間働き続ける、「Mr.胃ぶくろ」課長。しかし、「Mr.胃ぶくろ」課長も、ひとりではなかったのです。旧来の親友である「粘膜保護剤君」・「制酸剤君」・「抗コリン剤君」の三銃士たち、そして最近になって、スーパーマン(H2ブロッカー)とウルトラマン(プロトンポンプ阻害剤)と言う強力な援軍が登場したのです。さらには、「ピロリ君」の排除に向けて機動隊の導入(抗菌剤による除菌)も検討されつつあります。以下、この心強い仲間たちについて紹介します。

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1.三銃士
この三者はまさに三銃士で、従来より胃炎・胃潰瘍治療の三本柱とされてきたものです。「粘膜保護剤君」は、胃粘液の分泌を促進したり、粘膜の微細血流を亢進させたりして、酸やペプシンによる障害から粘膜を守ります。「制酸剤君」は、重曹や水酸化アルミニュウムなどが主成分で、まさに過剰に分泌された塩酸を中和します。「抗コリン剤君」は、ストレスによって過剰に分泌されるコリンエステラーゼをブロックし、胃での酸の過剰分泌を抑えます。

2.スパーマン
H2ブロッカーは、1980年代に登場した強力な酸分泌抑制剤で、三銃士に比べて遥かに高い潰瘍治癒率を示しました。そして、胃潰瘍の外来治療を可能にしたのも、この薬の登場によります。従来は入院治療が、胃潰瘍の治療の常識でした。

3.ウルトラマン
1991年に、H2ブロッカーよりさらに強力な酸分泌抑制作用を持つプロトンポンプ阻害剤が登場しまた。この薬は、胃酸の分泌をほぼ0に抑制し、H2ブロッカーでも治らなかった、難治性の潰瘍さえも治癒させることが出来るようになったのです。しかし、ウルトラマンはその作用が余りにも強力なため6週間から8週間経過すると、胸のランプが点灯し、宇宙に帰らなければならないのです。すなわち、胃酸には雑菌の繁殖の抑制、消化の促進、ビタミンB12の吸収の促進と言った、様々な役割があるので、あまり長期にわたってこの働きを0にしたままではいられないのです。その限界が約8週間ということなのです。

4.機動隊の導入
抗生物質や抗菌剤を使用して、「ピロリ君」を除菌しようと言う考え方が一般化してきました。機動隊を導入し、ピロリ菌を除去することによって、胃潰瘍の再発を予防できることが、確認されました。プロトンポンプ阻害剤と抗生物質2種の併用で、約1週間の服用で除菌できます。井石先生に頼んで除菌してもらいましょう。

ちょっと余談ですが、では「ピロリ君」はどこから感染するのでしょうか?確定的なことは現在も判っていませんが、『糞』・『口』感染や、水系感染は現在の所否定されています。その根拠は、現在の検査によっては生菌が、糞便中に排泄されることが確認されるはほとんどなく、現在の水道事情を考えて、まず水系感染も考えられないからです。現在最も有力と考えられている経路は、『口』・『口』感染ないし、『胃』・『口』感染です。すなわち、濃厚なキッスないしは、吐物に接触した後、手を介して経口的に感染する可能性です。