虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)


虚血性心疾患の死亡率は、現在のところ、欧米(特にロシア・米国)に比べ、今の日本では遙かに少と言われていますが、最近は虚血性心疾患の頻度も死亡率も増加しつつあります。この背景には、食生活の欧米化、すなわち飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品の摂取による高脂血症患者の増加、若年者の喫煙率の増加、不況や受験戦争といった社会的ストレスの増大、運動不足などの危険因子の増加が考えられます。これらの危険因子の多くは不適切な生活習慣の結果、起こってきているものが多く、虚血性心疾患の予防にはこの不適切な生活習慣の改善が望まれます。


akujunkan 不適切な生活習慣とは、エネルギー過剰摂取・脂肪摂取過剰・糖質摂取過剰・塩分摂取過剰・アルコール摂取過剰と言った、食生活の偏り、運動不足、ストレス過剰などがこれに当たります。そしてこの、不適切なライフスタイル(生活習慣)は、高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満を生み出し、喫煙とも相まって、全身の動脈硬化が進行し、様々な臓器疾患を引き起こすという、悪循環を生み出していきます。そして、この高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満・痛風・喫煙などを、動脈硬化ないし虚血性心疾患発症のリスクファクターと呼びます。そしてこれらのリスクファクターはすべて生活習慣と密接に関連しており、これらの因子が、2つ3つと重複するとさらに動脈硬化のリスクが高くなり、さらに肥満があると、他のリスクファクターをさらに助長させると言われています。


Framingam <虚血性心疾患の発症>

左図に示す様に、リスクファクターの集積によって起こる冠動脈効果による虚血性心疾患の発生率がリスクファクターの数によって増加することが、アメリカのフラミンガム研究やプーリング・プロジェクト(全米5主要疫学総括成績)により認められています。これらの疫学データーによれば、男であることがまず第一番のリスクファクターであると言われています。そしてさらに、 喫煙・高コレステロール血症・高血圧の3つを3大リスクファクターと呼んでいます。これら3大リスクファクターを持つ人の、今後10年間の虚血性心疾患の発生率は、リスクファクターを1つしか持たない人の3.6倍にもなることが明らかにされています。












PoolingProject 左のプーリング・プロジェクト(総括成績)のデーターをみても、やはり3大リスクファクターがそろうと、虚血性心疾患の発症率が著しく増加することがわかります。したがって、虚血性心疾患の危険因子はすなわち動脈硬化の危険因子であることがわかります。動脈硬化自体は何ら症状がありませんから、その時期から様々な生活習慣に注意して動脈硬化を防止しして行く必要があると思います。











lisk factor <虚血性心疾患の予防>

上に述べてきた様に、虚血性心疾患は、様々な不適切な生活習慣習慣をもとにした動脈硬化の進行に引き続き起こってくるものと理解できたものと思います。したがって、虚血性心疾患の予防には、左図に示した様々なファクターが関連してきます。したがって、まず第1番には、偏った食生活や運動不足の改善などの生活習慣を改めることが必要と思われます。特に肥満がある場合には、まずこれを解消する必要があると思います(これがあるとさらに他の危険因子を増悪させる)。その上で主治医とよくコンタクトをとり、高血圧症・高脂血症・糖尿病などの治療が必要な場合は、必要な治療を適切に受けてください。いわゆるA型性格などにもとずくストレス、社会的ストレスなどが傷害になっている場合には、心理療法も含めた、対象薬物療法なども必要となってきます。最後に、虚血性心疾患の予防には、禁煙は絶対条件になりますので、必ず実行してください。
(図・表は斉藤 康編集「臨床医のための動脈硬化」より)