「肥満」の謎

 一口に「肥満」といっても、単に体重と身長からだけでは判断できません。たとえばボディビルダーやレスリング選手は、身長は180〜190cmで体重は100〜120kgという選手が一般的です、これをBrocaの桂変法による標準体重から見るとすべて肥満ということになりますが、体脂肪率から見ると彼等は限りなく0に近いのです。したがって、一口に標準体重といっても様々な側面から見直す必要があるのです。

ざっとあげてみると以下のようになります。

1)美容的肥満の基準
2)機能的肥満の基準
3)病的肥満の基準
4)生命予後に及ぼす肥満の基準

1)「肥満」・「ダイエット」といえばまず取り上げられるのは、美容的な理想のプロポーションとは何かということです。特に女性にとっては、これが大問題となります。しかし、この基準も曖昧なもので文化的・時代的背景で全く異なってくるのです。たとえば以下の二つの写真です。画像Aは、今、芸能界で理想のプロポーションを持つ女性の一人といわれている藤原紀香さんの写真です。いっぽう、画像Bはかの有名なルノアール画伯の手による美少女画です。一目瞭然、理想のプロポーションというのは時代的・文化的背景により異なるということがおわかりと思います。
Norika Fujiwarabathing young girl

したがって、美容的な側面から見た場合「肥満」だとか「肥満」じゃないとかいってみても、それは非常に曖昧なものなのです。極端にいえば本人が満足するかどうかにそれはかかっているということなのです。
2)機能的側面から見れば「肥満」の基準は、その目的により異なってきます。まず、その目的が競技スポーツなのか健康スポーツなのかでも異なってきます。同じ競技スポーツが目的であっても、その種目が何かによって至適体重・体型・体脂肪率が異なってきます。たとえば、短距離選手ではパワーが必要なので筋肉量を増加させる必要があるのに対し、長距離選手では過度の体重増加は、たとえそれが筋肉量の増加であっても不利になってきます。この様に、相撲・レスリング・短距離走・長距離走・水泳・フィールド競技etc.それぞれの種目によって至適体重の基準は異なってきます。特に水泳は特殊で、あまりに体脂肪率を絞りすぎると比重が増大し浮力が低下し、結果記録の低下につながるのです。すなわち、ある程度は体脂肪を蓄えておかなければならないのです。以下各スポーツ種目別の代表的な体型をお示しします。

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3)病的「肥満」とは、その「肥満」によって糖尿病、高血圧症、高脂血症etc.の何らかの病的症状が出現しているか、出現する可能性が十分にある場合のことです。

4)そして、最後に問題となるのは、果たして生命予後(長生きできるかどうか?)と「肥満」とは何らかの関係があるのか否かということです。すなわちどの様な肥満が治療を必要としているのかが問題となってくるのです。

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 表1

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 表2      (明治生命,塚本先生のデーターから引用)

上の表1・表2は肥満度と死亡指数との関係を示したものです。表1は男性、表2は女性のものですが、一見して解るように肥満度が増加すると伴に死亡指数も上昇しているのが解ります。以上のことから、「肥満」と生命予後の間には密接な関係があることが解ります。